「うえ〜い!」

予期せぬことは起こるものである。12月29日、出発の朝、目を覚ますと雨粒がコツコツとホテルの窓を叩いていた。雨の予報がなかったわけではないが、きっと曇り程度だろうと鷹をくくっていた僕は、起き抜けに少しうろたえた。あわわわわ。用意してあったおにぎりをお茶で無理矢理流し込むと、風呂場でアメニティの封を切る。シャワーキャップと髪留めのゴムを拝借して、撮影用のカメラが濡れないように防水仕様にする。どたばたとあっという間にスタートの時間が迫ってきた。

午前6時前、名古屋城に着く。ここから5日間の旅が始まる。疲れていないうちに距離を稼ごうと、1日目は89キロを走ることにしていた。名古屋城から岡崎城、吉田城を経由して、浜名湖畔の鷲津駅がゴール。翌日以降の疲れをできるために睡眠時間はきちんと確保したい。夜6時のゴールを目標にした。

名古屋城正門前には、3人の人影。やっぱり...。慶太さんとまーちゃんがそこにいた。事前には来ると云っていなかったけれど、変態同士の絆で結ばれた勝手にウルトラメンバーだ。びっくりしない僕にふたりは不服そうだった。そして、もう一人、てぃぐれさんがいた。以前からネットで交流していた一宮市のランナーさん。この企画に賛同してくれて、名古屋支部を立ち上げ、独自のウルトラを今日走ろうというのだった。自宅からセントレアまでの道程の一部を僕のルートに合わせてくれて、これから100キロ走る。



朝6時、怪しい4人の旅団はしとしとと雨の降る名古屋城を出発した。Ustream配信も配信も開始、薄暗く静かな名古屋市内と誰も見ていないであろうネットに賑やかな笑い声を響かせながら、4人は走った。てぃぐれさんは熱田神宮まで一緒に走ってくれ、そこでお互いの健闘を祈って握手、道を別れた。そして、3人に戻った僕たちにラン仲間から1通のメールが届く。

「Ustream、見られないんだけど...」

おかしいと思ってすぐにカメラを確認する。ストリーム中のランプはきちんと点灯している。スマホを取り出してサイトにアクセスしてみる。「放送されていません」の文字が表示される。あわわわわ。歩きながら調整をしてみる。うんともすんとも云わない。いきなり壊れてしまったのか?仕方なく、一時走行中断。道路沿いのコメダ珈琲店に入ることにした。

「モーニングはなしで」



ブレンドを頼んで、機材を確認する。配信されていない。電源を入れなおしても配信できない。諦めてリセットスイッチを押し、昨年使った予備のカメラに切り替る準備をしていると、「ピピピッ」といきなり配信が始まった。何とも天邪鬼なカメラである。序盤から30分以上のタイムロスを余儀なくされた。

「せっかく一生懸命しゃべったのに〜!!」

旅のルートの説明も、てぃぐれさんとの思い出も残っていなかった。コメダ珈琲店を後にした僕は、結局、一度話した内容を再度繰り返した。

「ああ、人生やり直しの連続...」



そして、無駄にしてしまった時間を取り戻すかのように、黙々と走った。徳川家康公の生家である岡崎城、藤川宿、吉田城と歩を進め、岡崎市でふたりと別れた僕は、その後、休憩を繰り返しながら浜名湖畔へとひた走った。ゆっくりしたかった休憩時間もソソクサ。結局、ゴールの鷲津駅に着いたのは夜7時を回ったころ。初日の遅れとしては許容範囲内だった。

が、しかし、ここからがまたどたばただったのである。マネージャがいるわけでもない僕は、ここから明日の準備を開始した。今着ていたウェアを洗濯、夕食、明日の朝食の準備、そして、機材のチェックと充電。

どのホテルもコインランドリーの付いたところを選んでいたけれど、わお!使用中!空くまでに30分待たされた。



「何これ?忙しい...」

勝手にウルトラの夜はなかなか終わらない...。これをあと4日も続けるのかと思うと、僕はすこしうんざりした。