はっきり言って、びっくりするくらい眠いです。一睡もせずに夜通し100キロも走ると。

 実を云うと宇都宮に入る少し手前、石橋のミニストップで限界を迎えました。その時、隣にはこえびさん。目を覚まそうとソフトクリームを買った僕は、店の隅の休憩スペースで、2分寝てはソフトクリームを一口食べ、また2分寝ては一口食べというのを繰り返していました。自分が泥になったような感覚、体の限界と脳の限界が同時にやってきて、腐って溶けてなくなってしまいそうな感覚は初めてでした。

 宇都宮の自宅で休憩をした後、僕は日光山へと少しずつ登り始めた道をふらふらと歩いていました。まっすぐに歩けずに、その場にしゃがみ込み、また立ち上がることができるようになると、ふらふらとゾンビのように進む。未知との遭遇2016。

「もうちょっとで眠気を抜けそうな気がしますけどね、眠い…。」

「あまりぼやく元気もないですね。ノボリ旗をみたお母さんに声を掛けられて、それで目が覚めました。今まだ野沢町なので、宇都宮インターすら超えていません。盛大に時間を無駄にしております。結構、やっぱり、1時半から2時にかけて食べた、上州煮ぼうとうと焼き鯖寿司の消化に血を持っていかれたのか、本当に眠かったんですけど、いま、少しだけ引きました。車だとすぐに来ちゃうんですけどね。よぼよぼの脚で走ると、なかなかしんどいですねえ。何とか一個一個踏ん張ってクリアしてくしかないかなと云う気がしています。」

「のろのろ運転ではありますけど、走っています。だいぶ、脚が両足ともパンパンになってしまいました。膝の上までプルプルする感じですね。眠気に関しては、来ちゃうと体全体が支配されてしまって、動けなくなってしまいます。でも、好き好んでやっていることなので、仕方ないですね。ゴールを目指せ。今市まで13キロですね。社寺の表示が出てくれると助かるんですけど...。」

 10キロを進む間に口にした言葉はこれだけ。全ての言葉は力無く、ため息交じり。夢と現の間にある谷に堕ちてしまったかのように一人の時間をただただ耐えて進みました。そして、少しずつ辺りは黄昏。終わらない旅を呪い始めていました。日光市に入って、残り20キロ。いつもなら「もうハーフマラソンの距離もない」と思えるはずなのに、遠退く感覚に何も感じず。

「...」

「...」

「...」

 はっ!あれ?慶太さんとまーちゃんがいる。勝手にウルトラマラソンを一緒に作り上げた仲間が夢に出て来た。いや、お迎えに来たのかな??そう、朦朧とした意識の中、懐かしい顔ぶれが浮かんできました。ん?いや、なんだここは日光か。あれ、さっきの続きか?え?あれ、でも慶太さんは伊豆に行くから、今回来れないって言っていたし、やっぱり幻?

 少し眠気の波が引いたところで、僕は認識しました。目の前に、盟友慶太さんとまーちゃんがいる。一番つらくなるであろうポイントに足を運んでくれたらしい。また、ばぁーっと涙が出てきます。寒い、眠い。疲れた。休憩。どうも今回のオアシスはミニストップ。終盤の取材に駆け付けてくれた福嶋アナにマイクを向けられる。

ぷ:「こちらは、創立メンバーの慶太さん、ふたりで企画して...。こちらは勝手に箱根駅伝の発案者まーちゃん」
福:「お二人の登場はサプライズだったんですか」
慶:「サプライズなんですかね。いや、多分分かっていたと思いますよ。」
ぷ:「思ってないよ、伊豆にいるって言ってたんだし。嘘つき!」
慶:「伊豆にいる。なんか、ディズニーランドみたいだね」
ぷ:「伊豆にいるランド」
福: 「それでは、休憩?何か食べますか?」
ぷ:「ソフトクリーム食べるんです」
福:「ソフトクリーム食べるんですか!?」
ぷ:「そうですよ、そのためにミニストップにしたんですから」
福:「途中数々のコンビニがある中・・・」
ぷ:「シカトっ!ミニストップでソフトクリームが食べたかったという。」

10分後...

福:「どうですか、ソフトクリームの効果は?」
ぷ:「いや〜、冷えました。いやあ、反省しています、今。」
福:「比較的元気な様子だと思うんですけど」
ぷ:「カラ元気です」

慶太さん、まーちゃん。このふたりはいつも黙って大事なところに現れる。そして、温かな光で照らしてくれる。もう何だかさ幸せ過ぎて嬉しくって、寒さも忘れて前に進むことを思い出させてくれた。そして、気の利いたことに、残り8キロの所で、僕に手を振る。

「あとは一人で、奥さんが待ってるんでしょ」

もう、嫌になっちゃう。本当にありがとう。夢の国から這い出た僕は、最後の力を振り絞ってもう一度走り出した。


(つづく)